「え?一ノ瀬くん?」別荘の私有地になってるコンクリートの駐車場に到着してエリナがビーサンに入った砂を払いながら、ふと顔をあげて聞いてきた。
「そうそ、どう?アイツいいヤツだよな」
さりげな~く、を装ったつもりで、同じように足にくっついた砂を払いながらあたしが目だけを上げた。
なかなかいい物件だよ?と言う意味を込めて。
だけどエリナは天然なのか鈍感なのか、あたしの気持ちを全然察してないようで
「うん♪いい子だよね~」とにこにこ。
はぁ
やっぱエリナの中で千里は範囲外なのかぁ。
まぁ千里も実際のところエリナをどう思ってるのか分かんないから、無理やりくっつけるのもどうかなーって思うケド。
なんてことを思いながら別荘に入ると、リビングではキョウスケとイチがいた。
イチはソファの肘あてに頭を置き、心地良さそうに眠っていて、その向かい側のソファでキョウスケが文庫本を読んでいた。
わぁ……やっぱイチはお姫さまだ…てか女優か…
それにしても…ワンピースの裾から伸びた白くて細くてすんなりした脚が
び、美脚!
思わず自分の脚と比べると、恥ずかしくなった。
あたしらの気配に気づくとキョウスケはゆっくりと顏を上げ、メガネを取る。
「ふ~、ここは涼しいな」とわざとらしく顏の前でパタパタ手うちわをしていると
「熱中症には気を付けてくださいね」とキョウスケからありがた~~い、アドバイス。ちょっと前熱中症になって倒れたからな。
あんときは色々世話になったぜキョウスケ、ありがとよ。
「ジュース取りにきたんだ。お前もちょっとビーチに来るか?せっかく海に来たわけだし」
「そうですね……」とキョウスケは歯切れも悪くほんのちょっと顏を逸らす。
「何でぃ!態度わりぃな!」と思わず勢い込むと、キョウスケは顏を戻しその顏に淡い笑みが浮かんでいて、何故かあたしは顎をひいた。
キョウスケの微笑みは、とっても穏やかだった。
「お嬢、その水着似合ってます」
「お、おうよ!ありがとな。あの陰険蛇田にガキ扱いされたから、ちょっと大人っぽいの選んだんだ」
「あたしも一緒に選びました。ね~サクラ」とエリナがあたしの両肩に手を置き
「新垣さんも、よく似合ってますよ」とフェミキョウスケがエリナを見る。
大人っぽい……のを選んだつもりだけど、ソファに横たわっているイチとはやっぱり全然違くて。どうやったらあんな色気が出るんだろ…とちょっと思ったり。
そんなことを考えてると
「あ、あたし日焼け止め部屋から取ってくる~」とエリナがマイペースに言い部屋に向かい
あたしはリビングに残された。
キョウスケと二人―――
ぅをい!!エリナ!あたしを置いてくな~~!!



