あたしはサンサンと注ぐ太陽の光から逃れるようにパラソルの影に移動した。だって日焼けしたくないもん。自然に移動したつもりなのに、気付いたら戒がすぐ近くに居て…
んぎゃぁ!
思わず後ずさった。
「ひとの顏見て逃げるって何なんだよ」戒は不服そうに口を尖らせる。
「いや、逃げたつもりはないけど……」
何て言うかね、恥ずかしいんだよ、あたしゃ!
と思って逃げた(?)先が、千里のすぐ傍で。千里の上半身裸の腕にあたしの二の腕が触れて
んぎゃぁ!
またもあたしは肩を震わせた。千里の方も思いがけないタイミングだったのか顔を赤くして、顏を背け
こ、ここは危険過ぎる!
と改めて思い知った。
「てか一ノ瀬、お前も何でボートに乗っていかなかったんだよ」と戒が恨みがましく千里を睨み
「お前が朔羅に手ぇ出さないか見張ってるんだよ!てか、そもそもあれは二人乗りだろ」
そう、千里が指摘した通りバナナボートは二人乗りだ。リコとエリナが乗っている。それをキモ金髪が泳いで押してるって感じ。
ここからでも聞こえるし分かる。女子二人のキャッキャした声や様子が。う゛~ん、可愛い女子が二人乗ってると妙に絵になるな。
「お前、ホントは羨ましいんだろ~進藤のヤツが」
戒がニヤリと笑い
「はぁ!?何で!」と千里が目を吊り上げる。
「だって(見た目だけは)可愛い女子二人が乗ってるボートだぜ?」
「俺はリコを女としては見れない」と千里は大真面目。まぁリコも千里を男だと見てないからいいのか??
「じゃなくて、新垣の方だよ。あいついいヤツだよな」
戒がバナナボートの方をやんわりと眺め
「……ま、まぁいい子だって言うのは分かる…」と千里は体育座りをして俯いた。「気ぃ遣ってくれてるし」
あ、そこは気付いてたんだ。
「新垣もさ、今カレシ居ないらしいぜ?お前立候補したら?」と戒がにやにや。
「な!立候……!?」びっくりし過ぎた千里の声は裏返っている。
ま、まぁ?ここでエリナと千里がくっついてくれたら、あたしも変な関係に悩まされないからいいな……千里いいヤツだし。
……
て、他力本願だな。
恋するのは当人同士の問題だし、あたしたちがあれこれ言えるもんじゃない。
てかエリナ彼氏はいないけど、好きなヤツはいるし……
てかそれがタイガって……



