「きれいや」





響輔は言った。


響輔の手が再び背中に回るとゆっくりとベッドに倒される。響輔がそっと覆いかぶさってきて


「響輔」


泣きそうになるのを何とか堪えて、響輔の頬にそっと手を伸ばした。


響輔の手もあたしの頬を包む。


お互い―――宝物に触れるように、繊細で…優しく。


再びキスをするともう止まらない。


響輔があたしに一瞬でも朔羅を重ねたかもしれない。


あたしが一瞬だけ玄蛇に重ねたかもしれない、自分自身の気持ちがどこにあるのか分からない。


けれど


今はあたしたち二人―――気持ちで繋がってると


信じたい。



―――


――


響輔のキスは優しい。


響輔の手も優しい。


壁に映しだされた二人の影が、まるで軟体動物のように複雑に絡み合っている。


つま先からせりあがってくる痺れは甘い快感。


まっさらな白色のシーツが舞い、あたしのつま先がのけぞる。響輔の手が足首から膝の間を辿り、あたしは響輔の少しだけ汗ばんだうなじを撫でる。


行為が白熱すると、互いの乱れた呼吸音だけが室内を満たし


果てる間際



「響輔」


あたしは響輔の首に腕を回し襟足にきゅっと力を入ると、





「愛してる、一結」






響輔は応えてくれた。


あたしの頬を親指の腹でそっと拭ってくれて、あたしはこのときはじめて




泣いてることに気づいた。



「あいつのこと…忘れなくてええよ。



揺らいでもええよ―――




ただ、最後に戻ってくるのが俺んとこやったら、俺はそだけで―――……





……それだけで充分や」




響輔―――




「ただいま」




あたしの戻る―――場所。




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