キスは触れるだけの優しいものだった。すぐに唇と唇が離れる。


「はぁー……ほんまは今すぐにでも押し倒したいんやけどなー」と戒はため息。


は!お、押し倒す!!?


「さ、流石にお前もこの状況では何もできねぇよな」


とあたしは苦笑い。


戒はたっぷりの間を開けて





「―――そうだな」





と、一言呟いた。


あ……また……切なそうに…悲しそうな強引に浮かべた笑顔がどこかぎこちない。


あたしは戒をきゅっと抱きしめ


「戒―――…」そっと名前を呼んだ。


「ん?」戒もあたしの背中に腕を回していて上目で短く聞いてきた。




「大好きだよ」




いつも以上に素直になれるのは、はじめての旅行と言うシチュエーションだからか。特別な夜な気がして。


「俺も……めっちゃ好き」


戒はちょっと顏を赤くしてあたしの首元に顔を埋める。何かを仕掛けてくる様子はなく、耳まで赤くなってるから照れてるんだろうな。


でも照れてる戒……可愛い。