極道の男は女を大切にする生き物だ。
だから―――“これ”は間違いなく『裏切り』だろうが
俺はキリ―――…
お前が見えなくなってるんだよ。
大狼
朝霧―――…
今の所、あの兄妹が互いに面識があるのかどうか分からないが、
でもキリは玄蛇の生き残りと言うことは間違いない。
キリ―――…
俺はマネージャーと口づけをしながら、最低なことを考えていた。
このマネージャーにキリを重ねたのか。キリから逃げたい為に、マネージャーに顔を近づけたのか。
マネージャーも夫から…いや、現実から逃げたい為だったに違いない。
でも
逃げたいと思っても、何で忘れられないのだろう―――
最初は深く愛情なんて抱いてなかった。だから結婚を決めた。でもやっぱり俺はキリの事を
愛して―――
「……ごめ……なさ!!」
マネージャーが慌てて後退して、俺もそれ以上何かを仕掛ける気などなかったから、元居た場所に戻った。
「……すみません」
俺も謝った。額に手を置き深く吐息をつく。
「あなたはyouのお父様でいらしゃって、私はyouの母親を気取ってました。
でも、本当の意味で私たちは
家族にはなれない」
分かっている。
魔が差した、とは言い方が悪いが…いや、どんな言い方に変えてもその事実に代わりはない。
寄りに寄って娘のマネージャーの女とキスをした、なんて―――
最低だ、俺は。



