。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



結局、マネージャーが買ってきた惣菜をつまみに酒を飲むことになった。


こんな…人生相談会みたいなこと性に合わないが、今日の俺は何だか誰かの話に耳を傾けていたい、そんな気分だった。そうじゃないと否応なしに考えてしまうから。


大狼


キリ―――



スーパーの惣菜売り場なんて用がないし、食ったこともほとんどないから、いかにも健康に悪そうな味を想像していたが、意外にいけるな。毎日は無理だけど。


俺は揚げ出し豆腐を食いながら、向かい側でようやく緊張が抜けたのかマネージャーはビールを一気に半分程飲み、小さく吐息をついた。


「結婚して15年程ですが、私たちの間に子供は居ません」


この問題に何と返していいのか分からず、


「まぁ忙しいでしょうからね」と当たり障りのない返事を返した。やっぱり俺は人生相談会には向いてないみたいだ。マネーロンダラーにはなれても、カウンセラーにはなれない。


「いえ…忙しいのを理由に私たち逃げてたんです…


お互いの気持ちから。子供を授からない現実から。


最初は不妊治療とかしましたが、どうしても無理で……だから私は気を紛らわせる為仕事に打ち込みました。主人は……やっぱり子供が欲しいのか…若い子と…」


言いかけた言葉をマネージャーは慌てて飲み込んだ。きゅっと握った拳に力が籠っているように見えた。


すでにスーツの上着を脱いでいて、ネクタイを肩に掛けながら俺はウィスキーのグラスを傾けた。部屋は冷房が利いていて寒いぐらいなのに、俺の中は苛立ちの為か熱かった。


酷い男だな。


極道の男は―――女を大切にするものだ。


こうと決めた女に誠実であるし、裏切ることはほとんどない。


「……だから、私はきっとyouを本当の娘だと思って可愛がっていたのだと思います」


なるほど…だから喧嘩したことにここまで悩んでいるのだ。


恐らく口喧嘩なんてしょっちゅうだったろう。イチからは鬼マネージャーと愚痴られていたし。


でも



そこまでイチがこの女に可愛がられていた―――


愛されていた―――




と知って、熱くなっていた心が優しい温もりに変わっていった。