。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



マネージャーに断りを入れず、勝手にグラスにウィスキーを注いだが、彼女はそのことに何も言ってこなかった。


「まぁ、気持ちは分からないわけでもない。私があなたでもそうしていたでしょうね」


グラスを傾けて苦笑を浮かべると、マネージャーがぱっと顏を上げた。


その顔は不安に揺らいでいた。


俺がそれほど怒っていない、と気づいた筈だが、まだ彼女の中でくすぶっている何かが払拭できないのだ。



「イチと仲直りの橋渡しを―――……?


生憎ですが、私はあいつに嫌われてましてね、こっちの話なんて聞き入れないですよ」



淡々と言うと、マネージャーは目に見えて落胆した。


「……いえ…お父様にそのようなこと頼める身分ではございません…自分が招いたことですので」


お父様……と言われるのは正直まだ慣れない。確かに俺はイチの父親だが、このマネージャーの方が俺より年上だし、変な気持ちだ。


「正直に言ってみてはどうですか?あのネタをリークしたのはお前の名前を売る為だ、お前を守るためだ、と」


提案してみたが、マネージャーはゆるゆると首を横に振った。


「ちゃんと言いました。でも……分かってくれなくて…」


イチと喧嘩してここまで気落ちしてるマネージャーも意外だったが、彼女のしたことに対して怒っているイチも少し意外だった。


何て言うか…あいつ、そうゆう面では妙に割り切ってるところがあったからな。


理解ができない、と言うタイプではない。


では何故か―――…


グラスの中で琥珀色の液体をゆらゆらさせながら、ふと顏を上げた。



「あいつ―――……


もしかしてあなたに裏切られたと思ってるんじゃないだろうか」