キョウスケの部屋からあたしが出て行くわけにも行かず、キョウスケは部屋からちょっと顔だけを出して
「はい」と返事をしている。きっと階段の下で壱衣が声を掛けてるんだろうな。
「メガネの野郎帰ってきたぜ?お前が探してるってマサさんが言ってて、呼んでこいって。
人使いあれーよな」と壱衣は苦笑。
「イチさん、それをマサさんに聞かれたら殺されますよ?」
「あはは~、今のはオフレコで」と言って壱衣は行ってしまった。
てか戒……!
帰ってきた!
あたしはキョウスケの部屋から飛び出ると、派手な音を立てて階段を降り、玄関でのんびりスニーカーを脱いでいる戒の背中を見ると、抱き付きたい衝動を押さえながら
「おう、遅かったな」とぶっきらぼうに声を掛けた。
「あ、ただいまー」と、こっちの心配はよそに戒はいつも通り軽い口調で手を挙げ
「てかどこに居たんだよ!お前のGPSが御園医院の近くの茶店で止まってたじゃねぇか!」
と小声で怒ると
「ああ、ワリ。ちょっと野暮用があって……んで、GPSで探られると厄介だと思って、ネコにつけてきた」
ネコぉ!?
てか探られてマズイところってどこだよ!!野暮用って何なんだよ!
と、あたしの怒りをよそに戒は、ふわぁと大きな欠伸。
「疲れた……俺、寝るわ」
と、マイペースに言って頭の後ろを掻きながら自分の部屋に入って行く。
てか、何なの!!
こんなに心配かけて!



