びっくり……した。


響輔の行動はまだあたしが完全に予想がつかないもので、いつになったら行動を分かるようになるのかな。


そして、いつになったら響輔の本心を見破れるのかな…


考えたって無駄だ。


あたしの手からボストンバッグが落ちた。


ドサっと床に落ち、またテディが揺れたけれど、あたしは拾い直すことなく、響輔も拾わなかった。


たださっき響輔から貰ったチューハイだけは大切に抱きしめたまま。


響輔はあたしの頭を抱き寄せ、響輔の胸の中


「俺ら喧嘩ばっかやね。あんま……女の子と喧嘩したことないから…ちょっと戸惑う。


ごめんな、うまくいかなくて。堪忍…」


ううん…と言う意味で頭を横に振り


「あたしも……」


「でも言いたい事言うのも大事なことかもな」


響輔は薄く笑った。


「うん」


あたしはおずおずと響輔の背中に手を這わせて、Tシャツ越しに響輔の体をきゅっと抱きしめた。


「俺が今言いたいこと……何やと思う?」


と、聞かれ、響輔の手があたしのTシャツの裾を捲りあげ、素肌に触れる。


その手はいつもと違って少しばかり熱をもったように熱い。


響輔の体温を感じただけで、ぞくりと首の後ろが粟だった。


「ゆ…夕飯食べ過ぎたかな~…とか…?」


わざとチャラけて言うと


「それもあるけどな。あんたの作ったカジキの煮つけ、うまかった」


響輔はちょっと笑って、笑う度に体が少しだけ揺れて、あたしは響輔のうなじに手を這わせた。


「食べたくなったらまた作ってあげる」


「あれもうまかったけど、今……俺は―――」


響輔があたしの髪をちょっとかきあげ、耳元でそっと


「鴇田さんに怒られるかも…」


と囁かれる。


響輔の熱い息が耳の奥まで伝わり、つま先から甘い痺れをきたす。


「やめてよ……旅行中に…父親のこと…」と何とか言うと


響輔はちょっと離れて真正面からあたしを覗きこみ、目があった。




「カジキより何よりも




一結が欲しい」





あたしも―――…


響輔が欲しい。