その後、変な沈黙になって…
前は先輩との沈黙が苦じゃなかったし、そもそも沈黙するってこともなかった。先輩はよく笑い、よく喋ったから。
ザザっ……
遠くで波の音がする。砂の上に押しては引いて……の繰り返しだ。
恋愛も……そうなのかも…
響輔さんのときはそうだった。でも押しても退いてもだめだったけど…
ガクリ
自分の中で、やっぱり響輔さんの存在はまだまだ大きくて……新しい恋をして失恋を忘れようとしているあたしは、やっぱ卑怯者なのかな…
と項垂れてると
「俺……人生ではじめて“尊敬”できる人に出逢った。
今まで……可愛がってくれた先輩はいたけど尊敬するかどうかって言われればNoで。
先こーも、親も誰も信じてなかったし、尊敬できなかった。
だけどはじめて人を信じられる、尊敬できるってひとたちが、戒の兄貴と響輔の兄貴だったんだ」
「響輔さんは……そうかもしれないけど、龍崎くんは尊敬に値する人ですか?」
思わず笑い声を立てると、先輩も笑った。
「兄貴たちはマジで喧嘩強いし、頭良いし、でも…それ以上に人情に厚い…
こんな俺でも受け入れてくれて、何だかんだ可愛がってくれて…」
「……はい」
あたしは今度は笑わなかった。ただ淡い笑みが口の端に浮かんだのが分かった。
だって先輩の言う通り―――
「その尊敬する戒の兄貴に言われたんだよ。
リコちゃんのことを泣かせたら只じゃすまさないって。
姐さんの親友以前に、戒の兄貴もリコちゃんのこと大切なダチだって思ってるから。
その覚悟があるのか?って」
え―――……龍崎くんがそんなことを……
「でも俺、即答したんだよなー
『大事にしたいっス!』って……
何の迷いもなく」
え――――……それって……



