な、何か変なこと言ったか?あたし。
でも、前にイチがスネークの計画を終わりにするって条件でこいつに交際を迫ってたし…
「殺し屋と言うのは、余程のことが無い限り、契約は続行されます」
「よほどのこと―――…?」
それが何を示すのか皆目見当がつかず首を捻っていると
「雇い主の一結が死ぬか、或はスネーク自身が死ぬ―――か」
キョウスケは淡々とその言葉を吐いた。強弱のないその言葉に、緊迫感は感じられないが。
“死”と言う言葉を聞いて、あたしはドキリとした。心臓の……タトゥーのある場所を思わず押さえると
「……何だよ、知ってるみてぇな言い方……お前はスネークと話したことないんだろ?
だったら、例外だって……」
と言いかけた言葉を
「知ってます。
ホンモノの“殺し屋”を」
キョウスケがかき消した。
“ホンモノ”の殺し屋―――
殺し屋にホンモノもニセモノもあるのか、と突っ込みたかったが、そんな空気じゃない。
「ヤツらは雇い主が居てはじめて行動を起こします。
その契約が何で動いているのか分かりませんが。大抵は“金”です。
一結は例外―――……と言いたいところですが、やはりそうではなく、一結のバックについている何者かが、本来の雇い主か、と。
それに、一結がスネークを売るとなると、今度は一結の命が危ない」
イチのバック―――……?
ごくり、と唾を飲み込むと、キョウスケはさらに続けた。
「プロの殺し屋は一度引き受けた依頼を必ずやり遂げます。どんな方法で実行するのかは、本人以外誰も知らない。
今までの歴史上、例外は一切なし。痕跡も全く残さない。
殺るか、殺られるか―――です」
キョウスケの淡々とした言葉に、今更ながらじわりじわりと恐怖が這い上がってきた。



