俺は眉間を指でつまんで凝りをほぐしながら


「全て計算済み―――か……流石、凄腕の会計士なだけある。


この一週間の間で“身辺整理”でもするのか?」


今度は俺は皮肉る番だ。


「僕が証拠隠滅を企ていると?生憎だがそうじゃない。そもそもプロは証拠を残すことはしない」


大狼は余裕の淡い笑み。


「じゃぁ何だ」


「完全な私用ですよ。プライベートが立て込んでましてね」


どこまで本気なのだろうか。


ほんの少し疲れが滲んだ大狼の声に、ちらりとこいつの横顔を見ると、ここにきて大狼が余裕顏を消し去り、ちょっと眉を寄せた。


「まさに“身辺整理”ってことか」


大狼の方を見ていた俺は、興味がなさそうにまた前を向いた。


「……それがどう言ったものか、聞いてこないんですね。何故?」


俺も大狼も会話をしているのに互いに顔すら合わせない。傍から見たら不自然だが、ここになってようやく大狼の方が俺の方に顔を向けた。俺も大狼を見る。


「単に興味がないからだ。俺が言いたいことは一つだけ。


会長は、お前が一週間と言う期限の間約束を破らないか、何よりお嬢の身の安全を懸念されている。


お前が少しでも下手な真似をしたのなら、お前の首が跳ねられるぞ」


別に……大狼がスネークだったとしても、そうじゃなくても、こいつの身がどうなっても俺にはどうだっていいことだ。


「ご忠告どうも。それだけですか」


と聞かれて



「それだけでも大罪だ。もし会長の御寵愛深いお嬢の身に何かあったのなら


地獄を見るぞ」




これが本当の意味での忠告だ。