それからもそもそと食事を再開させたが
「「………」」
ち、沈黙が重い!
龍崎家では何かと騒がしいから、あたしが喋らなくても、みんな好き勝手やってるし、口喧嘩の仲裁もしょっちゅうだ。
戒と二人でデートのときもあいつは良く喋ったし、千里と沈黙になっても、もう慣れっこだからそれほど苦じゃなかったのに。
考えたらあんまキョウスケと二人きりで食事、とかなかったな。
と、ぼんやり考えてると
「俺、女の子をフったのは初めてで。
しかも二回も同じひと」
とキョウスケがぎこちなく切り出して、それがこいつの気遣いだとすぐに分かった。
「そうなの?お前、モテそうなのにな~」
と、ワザとチャラけて言った。キョウスケの気遣いを無駄にしないために。
「いえ、全然。俺、フられてばかりでした」
「そーなの?意外だな、お前をフるって」
「そうですか?大抵フられる理由が『鷹雄くんて何考えてるか分からへんわ』って…それはもうルール本を読んでるような…」
ルール本って…
「あ~何となく分かる」
あたしがちょっと笑い、それはちょっと失礼かと思って慌てて食事を再開させる。
「まぁ?あれだ……、お前の考えてることが分かるって、それだけ親密なことだよな。
や、親密とか変な意味じゃなくて。歴史とか、距離とか―――」
慌てて言うと
「そうかもしれへんですね。
そう意味で一結は、距離が近かった言うことですね」
キョウスケが頬杖をついて、窓の外を眺めている。
その視線に慈愛を感じて、こいつの中で本当にイチの存在が“大切”なひとに変わったことに、再度確信した。



