「実は―――……スネークは大狼じゃないだろうか、と疑ったことが一度だけありまして」
それは―――知らなかった。初耳だ。
「ただはっきりとした証拠もありませんでしたし、その時は会長にお聞かせする程の内容でもないと私が判断しました」
鴇田は口ごもることなくあっさりと言った。
俺もそれに対して咎めるつもりはない。
ただ…
「どうしてお前はスネークはタイガだと疑ったんだ」
俺たちのにわか同盟が手を尽くしても、白虎のガキ共だって早々に掴めなかった正体だ。それより早く鴇田が気づいた―――その理由を知りたい。
目を細めて腕を組みながら聞くと
「似ていたんですよ…いや、正確には口癖が同じだった、と言う所です。
キリと―――」
鴇田が、ここに来て少しだけ吐息をつき額に手をやった。
鴇田とてキリのことはそれなりに大切な者に代わりないだろう。
「で?お前はどうした」
「確認する為、大狼のボディーチェックをしましたが、タトゥーなんかの不審点はなく。
あの時、もっと詰め寄っていれば…」
鴇田は言葉を濁し、吐息をつく。
「それは仕方ないことだ。お前だって口癖が似ていたと言う所だけであいつを疑ったんだ。それ以上の確証はなかったのだろう」
「そうとは言え、これは私の落ち度です」鴇田は頭を下げた。
「いや、詫びは要らん。
それより一週間後、俺はロシアに向かう予定があったのだが」
「一週間後?行先はズィエルーカラ社ですか」鴇田が顏を上げる。
「いや、あそこは切る。二重契約が発覚した。
そのせいで新しいビジネスパートナーと会う約束があったがキャンセルする。
だが、キリには一週間後、俺がロシアに向かうと言え。自家用ジェットも用意させろ」
「は……
しかし、何故?」
「あの女もどうもきな臭い。お前は知っていたか?キリが双子の姉?妹かもしれんが姉妹がいたことを」
これに関しても鴇田は特に驚いたりはせず
「ええ、前に一度だけ聞いたことがあります。妹がいた、と」
なるほど……キリは隠し通すつもりはないと言うことか。
「妹は死んだ、とか」
鴇田が追加情報を述べ、キリもきっと鴇田にそれなりに心を許しているとみえる(顏と体が目当て、とかフザけたこと抜かしてたがな)



