鴇田は質問の意図が分からないのだろう、首を傾け、やがて
「もしかして大狼の野郎が何かしでかしたんですか」と聞かれ
「………」
俺が沈黙すると
「あの野郎…会長までご迷惑をお掛けするなんて…
キツく言って聞かせます」
「いや…」と言いかけて言葉を飲み込んだ。
鴇田は心底迷惑そうに顏をしかめた。鴇田はタイガのことを毛嫌いしている、と言うのはキリから聞いた。大抵タイガの意味不明な行動に鴇田が振り回されてる、と言うくだらないと言っちゃくだらないが、本人にとっては迷惑そのものだろう。
「いや、やはり伝言を頼もう」
「伝言?大狼にですか」鴇田が不思議そうに目をまばたく。
「ああ、一週間と言う期限を切ったからには約束を守ってもらおう。
約束を破って朔羅に手を出してみろ。
お前の首を跳ねてやる、とな。
タイガは龍の逆鱗に触れた―――」
俺がちょっとだけ身を乗り出し両手をデスクに付いて低く言うと、鴇田は目を開き、俺の次の言葉を待った。
俺はことの流れをかいつまんで鴇田に聞かせた。どうして掴んだのか未だ謎だが、スネークのシッポを掴んだのは白虎のガキ共だ。
ガキ共はスネークを黙らせられる程のネタを掴んだようだが、スネーク……いやタイガは、それ以上のネタを持っていやがった。
ガキ共を黙らせる、とてつもなくデカいネタだ。そのネタには朔羅の安否が掛かっている。
タイガからの要求はただ一つ。一週間沈黙しろ、とのこと。
話し聞かせると、鴇田は目をまばたきながら俺の話に頷いたが、特別驚いた様子はみせなかった。まぁ元々表情に乏しい男ではあるが、流石にスネークが自分のすぐ下で働いている、と言うことには…
「驚くと思ったが?大して驚いていない様だな」
俺が顎を撫でながら言うと、鴇田の肩がここにきてピクリと動いた。



