。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。




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「…はっ!」


自分の声で飛び起きた。


自分が夢を見ていた、と言うことが分からず数秒の間「朔羅」と名前を呼んで、


だが、ここが見慣れた俺のオフィスだと言うことに気づいた。


照明を落とした会長室―――……


鴇田とキリが居ない今、この場が妙に広く感じる。


辺りはしん、と鎮まりかえっていた。


何をやっているのだ、俺は。悪夢に魘され、自分の声で起きるとか…


深いため息を吐いて革張りの椅子に深く背を預けると、自分が酷く酒臭いことに気づいた。


「今日は……飲み過ぎたな…」独り言を漏らすと


「そうですね」


すぐ近くで聞き慣れた声がして、のろりと顔を上げると、いつもの無表情を作った鴇田が


コトっと音を立てて水が入ったグラスをデスクに置いた。


「珍しいですね、ここでうたた寝をされるなんて」


「色々…疲れた。


お前も―――疲れたろ?」


「ええ、とても」


鴇田は短く言って、どこからか回転椅子をひっぱり出してきて、デスクの脇へ転がす。そしてその椅子に腰掛けた。


「イチの容体は?落ち着いたか」


俺が聞くと、


「おかげ様で。ご心配おかけして申し訳ございません」鴇田が深く腰を折る。


「詫びは要らん」ぞんざいに言って手を払うと、鴇田は微苦笑を浮かべた。


「今日お前は、鴇田組の事務所へは顏を出してないよな」確認の意味で聞くと


「ええ。今日は一日お休みを頂戴しましたが、急な案件が?」と鴇田が素早く言い


「いや、ただの確認だ」


と言うことは、鴇田は大狼と白虎のガキ共のやり取りを知らない―――ってことか。