朔羅が何を指して“罪の共有”と言ったのか、俺にはすぐに理解できた。
雪斗を殺したのは、本当は俺だってことに
朔羅は―――気付いていた―――…?
風が俺の耳元で女の叫び声のように甲高い音を鳴らしてすり抜けている。
「でも責めてるわけじゃないの。
貴方には感謝してるわ。
だって、私たちは
これでやっと一つになれた―――」
スネークのおかげでね。
朔羅は最後そう冷たく言って締めくくり
今度こそ、俺は意味が理解できなかった。
「さく……」
名前を呼ぼうとすると朔羅の肩からするりと何かが滑り落ちる。その“何か”は退化した四肢の体を器用にうねらせて朔羅の腕へ巻き付き、やがて雨龍の柄まで迫ってくる。
「朔羅!」
俺は叫んだ。
赤い眼、白い髪と肌―――
「やめろ!スネーク!!」
俺が叫ぶと
「何も知らない高校生でいたかった」
さっきのピンク色のワンピース姿の朔羅が、花畑の中…遠くの方で俯いている。
「朔羅…」
すまない…
朔羅―――
「泣いてる…」
朔羅が顔を上げ空を見上げた。
泣いてる…?誰が?朔羅は泣いてない。
「でも、空が―――泣いてる」
朔羅が小さく言って、
「雪斗が―――……鳴いてる」
突如として、さっきまであんなに晴れていた空は薄暗がりの雲が広がり、まるで押し迫るような暗い色が空を支配していた。
空に天井なんてない筈なのに、
ビシィ…
雲の合間に亀裂が入り、やがてガラスの欠片のようなものが降ってきた。
「朔羅、行こう。怪我をする」と朔羅の手を握ると、
ビシィ!!
再び破裂音のような音が聞こえて、朔羅と俺の間にいつのまにか氷のような壁が出来ていた。
「叔父貴っ!ここから出して!」
朔羅が叫んで壁をドンドン叩いている。
俺も同じように壁に拳を打ち付けたが、氷の壁は割れるどころか、亀裂の一つも入らない。
不穏な気配を感じ取って、はっとなって上を仰ぐと空が俺たちを押しつぶすかのように目前に迫っていた。
「朔羅ーーーー!!!」



