。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。




「おおまかなことは分かった。で?佐野の前の戸籍は?」


せっかちに聞くと


「それがね……抹消されてたの。まさにリカバリーね」と彩芽が嫌味ったらしく言って、腕を組む。その顔に不機嫌が浮かんでいた。


「抹消?そんなことができるのか」俺が聞くと


「戸籍の全てはデータベース化されていて、PCで管理されている状態だが、きれいさっぱり跡形もなく消えていた。何者かが侵入したのだろう。間違いなくプロの仕業だ。


何者かは言うまでもなく大狼自身だと思うが。


どうやって佐野に行きついたのか、頭を悩ます所だ」


なるほど…佐野の前に知られたくない名前があったんだな。


「だけどね、岩手県警に戸籍の確認を依頼したところ、不思議なことに玄蛇の方の戸籍はそのままだったわ。


玄蛇の最後の名の記載は


玄蛇 護矢(もりや)飛影(ひえい)、そして朝霧と深夕(みゆう)


だけどね、面白いことに二人の兄の生年月日が一緒。そして妹の方も同じ」


双子―――……?


恐らく玄蛇 護矢(もりや)飛影(ひえい)が本名なのだろう。


しかしキリに妹…もしくは姉がいたとは―――


「キリはそんなこと一言も…」


「どうやらお前の“秘書”は隠し事があるようだな」とタチバナは苦笑。「それでもお前の秘書を信用できるのか?」と言いたげだ。だが今はキリの隠し事よりタイガの方が先決だ。


それにあの女はまだ利用できる。


「四人の戸籍にはバツ印が打ってあったわ。つまり死亡か転籍と言った理由ね」


「しかし解せんな。佐野の前の戸籍は消し去ったのに、何故玄蛇の戸籍はそのままなのか」


タチバナが唸るように言ったが、



俺は少しだけヤツの考えが分かった気がした。


あいつは―――帰る場所を求めている。


玄蛇の痕跡を……存在を、生きた証を―――残しておくことで、それがあいつを支える唯一のものに違いない。