。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。




タイガのヤツ―――いや、スネークのヤツは一体何を考えてる……?


何故一週間と言う期限を切ったのだろうか。単なる証拠隠滅なら微妙な期間だ。


「ところでタイガの戸籍の方はどうだ?転籍前はどうなってた?」


俺がせっかちに聞くと、橘は軽く肩をすくめた。


「大狼の転籍前の戸籍は、“佐野”になっていた。佐野 恵一。


佐野家は神奈川に家を持っていたが、今は県内でアパート暮らしだ。大狼のことを聞いたが、ヤツの経歴通り、ヤツは六歳~九歳の三年間、佐野夫婦と同居していた。


ただ、佐野は幼児虐待の疑いがあり、大狼は児童保護施設に引き取られている」


大狼が児童施設に―――ちょっと意外だった。


「だがあくまで疑いだろ?佐野がよく施設に引き渡したな」と俺がグラスに口を付けると


「佐野の近所で、そのことはちょっとした噂になっていたらしい。近所の住人がいくらか証言している。当時佐野家で怒声を度々聞いていて、近隣の住人たちは迷惑していたみたいだ。


よくある隣人トラブルだと思っていたが、大狼の腕や脚にそれと分かる痣を見た住人たちの数人、そして小学校の教諭が児童相談所に通報したらしい。その後職員が訪ねて発覚したみたいだが、佐野は言い訳することもなくあっさりと手放したと言う。


児童虐待防止法は児童虐待について規定する法律であるが、児童虐待行為自体への罰則は設けられていないのが現実だ。逮捕を免れる為だったかもしれん。


佐野の証言では元々大狼を引き取ることに抵抗があったと言う。親戚筋とは言えほとんど交流がない存在だったのに、突然お荷物を押し付けられて、うんざりしていた、と証言した。


因みに佐野と反社会勢力との関わりはゼロだ。どう言った親戚なのかは佐野自身覚えてない、と言う。厄介事を忘れたい、関わりたくないと言った感じだな。


念のため、佐野の周辺も探ってみたが、やはり反社との繋がりは無かった。


佐野の夫婦には大狼の一歳年上の息子が居たが、こちらは実子だからか、暴行は一切なかったと言う。大狼を施設に追いやったのも、この実子の教育に影響が出るかもしれない、と言う理由も含まれていた」


「まぁ?結局、大狼 恵一への虐待が公になったから佐野一家は肩身が狭かったようよ?その実子も、ろくな定職にも付かず今はニート生活」


彩芽がちょっと苦笑いを浮かべ


「当然の報いだな」


俺はため息と共に煙を吐き出し、そして苦いものを呑み込むように一気にウィスキーを呷った。


大狼の生い立ちに同情するつもりはないが、少なからずその時からスネークの性質が形成されたと言われれば納得だ。