タクの手にはグラスが。その中は空だった。どうやら酒のお代わりを取りにきたみたいだ。
タクはすぐに
「あ、お嬢!無事で良かったす」と相変わらずの態度で気軽に聞いてきて
「おうよ。怪我の方は大したことないみたいだ」
あの医者がホンモノだったら、診立てに間違いないだろう。
あの謎のイケメンドクター……どうやら戒のお仲間だから大丈夫っちゃ大丈夫だろうけど。
「マサさんから聞きやした。転んだみてぇで。みんな心配してやしたぜ」
マサ…早速組員に喋ったのかよ。
「そっちも大丈夫だ。たぶん…?脳震盪だろ」
と軽く言いながらピザの箱をゴミ袋に入れようとしていると、
タクが息を呑む気配があった。
何だぁ?
と言う怪訝な表情でタクを見ると
「あ!それ俺片付けます!お嬢は部屋で休んでてください!」
と、あたしからピザの箱を取りあげる。
「え?それはありがてぇけど、あたしは腹が減って……」
と、やりとりしてると、再びガラっと引き戸が開いて
「おいタク、いつまで掛かってんだ?メンツが揃わなくて、早くしろって…」
と、今度は壱衣が登場して
「お嬢、大丈夫ですかい。マサさんから…(以下略)」
「て言うかまた麻雀かよ。好きだな、お前ら。
どうでもいいけど、居間の窓は開けて換気しといてくれよ?翌朝、タバコの臭いで臭いっちゃありゃしねぇ」としかめっ面を浮かべると
「へぇ!気を付けやす!」
と壱衣は直立不動で敬礼の姿勢。
している最中に、またも引き戸が開き
今度は誰だよ!騒がしいな、もぉ!!
と腹も減ってるから苛々して入口の方に顔を向けると
「ただいま戻りました…」
キョウスケが現れて、キョウスケはあたしを見るなり目を開き
「お嬢……ご無事でしたか…」とこっちもいつも通り。
「何だよ、耳が早いな。お前もマサから聞いたんか?」とあたしが聞くと
「マサさんから…?いえ、俺は何も……」
とキョウスケは居間で飲み会に参戦しているマサを気にした様子。
ってことは、ミラーハウスで怪我したことだろうな…
戒から聞いたんだろう。