。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。




「女を囲っているのなら別だが、それらしい女の影は見当たらない。


過去三か月間のケータイ履歴を見ても、そのほとんどが鴇田やヤツの構成員で、高校や大学時代の友人の類はない。他にケータイを持っていたなら別だが、


ヤツ名義で契約された痕跡もない」


とタチバナがタバコの煙を吐き出しながら、その灰色の煙は宙にどんよりと漂っていた。


まるで俺たちの会話のように、出口がなくあてもなく彷徨っている感じだ。


確かにタイガに“愛人”が居るって言うことが考えにくい。


「ただね、二週間前に一回だけちょっと引っかかる着歴があったの」彩芽がグラスを持ったままちょっと身を乗り出し、


「二週間前?引っかかる?」


彩芽の発言に俺は目を細めて彩芽の方を見やると


「発信元は千葉県、番号を追ったけれどプリペイド式のケータイで、誰が使用したのかは不明」


「我々はイチのバックに居る“T”の存在を疑ったが」


とタチバナが言い


「そんなわけないだろう。そもそも時期が違うし、そこまで周到に行動していたのなら、海外のサーバをいくつも経由してる筈。プリペイド式だとしても、連絡手段が容易過ぎる。そんな危ない橋を渡る筈はない」


と俺が言い切ると


「そうだ、でもその不透明な発信者が唯一の手がかりだ。本来ならヤツを尾行してその人物を探るのも可能だが、ヤツはこちらの存在に気付いている。警戒しているに違いない。



―――何より朔羅の身の安全が掛かっている。


こちらも下手な身動きが取れない」


タチバナが真剣な面持ちで顎に手をやり





「“目に見えない人質”か―――


白虎のクソガキ共がタイガに何を持ちかけられたのかは分からないが、あのクソガキども、そしてお前たちを黙らせる重要な取引材料を持っていたに違いない」


「まさに“美しき狂気”だぜ?あいつらを黙らせる程でかい“何か”、狂気…もとい我々にとっては凶器だな」


タチバナがナインピックのグラスを宙で傾け、


「なるほど」俺は頷いた。