なるほど、これがタイガの言う本当の意味での逃げ道だったわけだ。


「ああ、それと。解毒剤と引き換えにネズミを退かせてくれないかい?


一週間、私をマークするのもやめたまえ、と」


俺にとって解毒剤は何より大事。


ネズミに引き渡すことも考えたが、そうなったら解毒剤の処方は一生分からない。


しかもここまで周到に俺たちを翻弄してきたのだ。


タイガの身に何かあったら解毒剤の処方どころか、朔羅にも危険が及ぶ様、手配しているに違いない。


ぐっと息を飲んで、タイガの取引に「Yes」とも「No」とも言えなかったが


「追加の契約内容や。一週間俺たちが沈黙したら、その間だけでも一結の身の安全も保障しい」


と響輔がテーブルに手をついてタイガを睨む。


「それについては“一生保障”だ。心配しなくてもいい」とタイガは軽く手を挙げ


「だが、これで完全なるイーブンだね」と楽しそうに笑う。




「ひとは、守るものがあると弱くなる」



と、タイガはここでまたさっき聞いた台詞を口にした。


タイガは頬杖をつき俺たちから少し視線を離すと、温度の感じられない声音で呟いたのだ。


何となく……


それは俺たちに向けた言葉じゃない気がしたのは気のせいだろうか。


「あんたにとって守るもんが多すぎたようだな。命取りになるかもしれへんで?」と挑発するように言うと、タイガは顔を戻しにっこり笑顔。


「そのようだ」


ちっ


食えねぇ男だ。


「だが、それも君たちも同じ条件だと思うよ?


どうする、取引するのかしないのか」


俺は立ち上がった。





「沈黙―――したるわ。


だが、一週間後、俺は必ずお前の首を




取ってみせる」