タイガが顎をちょっと持ち上げ、そこに手を置いた。依然、動揺らしいものは見られなかったが、予想外のことを突かれた、と言う感じだ。でも、涼しい顔つきは揺らがない。
だが、さぁあんたの余裕、いつまで持つかな?
「あの女は、龍崎 琢磨の秘書で、鴇田の婚約者、そして
白へびや」
「調べはついています“玄蛇”にはコロシを請け負う暗殺者と、それに対になる白へびの存在がある、と」
響輔の援護射撃もあってか、タイガは口を噤んでいた。
好都合だ。タイガが何を考えてるのか、俺たちの会話の合間に切り返す何かを考えているのか、
でも、切り替えさせない。
「あの女いくつも顔もっとるみたいやけど、最後のが強烈やな。
龍神社で俺たちを攻撃したのは、あの女……白へびや。
その後、畑中組の倉庫で、白へびは…スネーク……あんたと同じ手を使った。
にわか仲間の死体の始末をして、その際コカインを打った。
俺は何でそない面倒なことするのか分からなかった。あんたと同じクリーナーの……技術がなかったといえばそうやけど、ほんまは
敵対するあんたに“宣戦布告”をしたんやないか?
しかも身元不明の死体が二体、畑中組のコカイン売買の疑惑が世間に取り沙汰されると、表だって四課のネズミたちも動きだし、あんたと、畑中組は商売あがったりや。
ある意味死体を溶かすより“合理的”やないか?
さらに白へびは鴇田んところに書面を送りつけてきた。ご丁寧に“S”と名乗って。
スネークの仕業に見せかけようとしたのかもしれないが、そう簡単にいかなかった」
口の端で笑って、勝利を確信した俺がちょっと身を乗り出すと、ここにきて再びタイガが薄く笑う。
何だ――――この余裕は…
「なかなか鋭い推理だが、少し違う。
確かに“私”には対になる者がいる。だがそれは
男だ」



