ただあなたの生きる理由になりたかった……。

 秋月琴は夜が苦手だ。なぜならいつも夜一人だったからだ。朝起きるのも苦手だが、今は違う。
起こしてくれる家族がいる
 夜が苦手なのに琴は夜の港に一人いた。手には重要な書類の入った茶封筒。それさえ渡せば任務完了だ。
「しっかし寒いなぁ。もう一枚引っ掛けてくれば良かったかなぁ」
 夏の終わりも間近。夜は冷える。琴は真っ白なワンピースを着ていた。訳はただそれしか持ってないからだ。
 
 パン!パン!

 突然の銃声に琴は肩をびっくと震わせた。ちょっとまて、この仕事は誰にも出来る簡単な仕事ではなかっただろうか?
 銃声はだんだん近づいてくる。
怖い!てか私は今は死ぬわけにはいかないのに……。

 近づいてくる銃声、琴はなんとか隠れる場所を探した。すると大きな男の子の手が琴の小さな手を引いた。
「何やってんだぁお前。大気ん家の養女じゃん。」
 琴はあっと思った。
スラリとした長身に童顔、亜麻色の髪。首席のくせに学校にはほとんど来ない、そしてそして

「大気の友達?」

 名を山下翔という。学校に来ても本ばかり読んでる。しかしその顔の良さが手伝ってか女子には大人気だ。
「なんであんたがいるの?」
「仕事だから」
「仕事……?」

 そう言うと翔は琴から茶封筒を取り上げた。
「返してよ」
 琴がぴょんぴょんとジャンプして取り返そうとするが、長身の翔には届かない。
「翔あったか?」
「いえありませんでした」
 そう言うと翔は書類にライター火をつけた。
「わりぃな。琴ちゃん。早く帰らないとお兄ちゃんが心配するよ〜」
 「バカー」
 琴はこの後遅くなった言い訳と任務に失敗した言い訳とに頭を悩ます事になる。