………………トリュフチョコの味。




 今、私は、
 二人っきりの家庭科室の中で…




「……ドジ、おとめ…?」




 今朝、告白したばかりの柏葉君に
 『ドジおとめ』って呼ばれながら




「そう。…苺だから」





 あっという間に




「『とちおとめ』ではなく『ドジおとめ』」




 ファーストキスを、奪われた……。





「心の中で君の事、そう呼んでたんだ。ずっと」






「…………?!」





 …思い出せそうで、思い出せない。





 柏葉君に『ドジおとめ』って呼ばれたのは多分、今が初めてだけど。



 もっとずっと前に、違う誰かにそう呼ばれた事がある様な…?!




「…………両想い…?」




 頭が全く
 ついていかない。



 とても信じられなくて…。




「本当に?」




 彼は頷いた。




「…………信じられないなら、もう一度する?キス」





 彼は私の髪を耳の後ろにかけて、
 また私を引き寄せた。



「……!」



 そしてもう一度、
 唇と唇が触れようとする寸前、





 予鈴が鳴った。





「…………時間切れ、か」




 睫毛が触れ合うくらいの距離。




 目を閉じていた彼は、
 仕方無さそうにその瞳を開いて、




 私から体を離して、
 立ち上がった。




「今日の放課後、ゆっくり俺に時間をくれる?ドジおとめ」






「…うん」





 動悸が激し過ぎて、
 これしか言葉が出て来ない。




 柏葉君は肩まである私の髪をもう一度撫でて、





「君の髪、…真っ直ぐでつやつやしてる。…ずっと触ってみたかったんだ」





 という、爆弾発言を落とす。





「授業、このままサボっちゃいたいけど。…仕方ないから、そろそろ行こうか」




 彼が差し伸べた手に自分の手を乗せると、





「…………?」




 彼は私の手をしっかりと握り締め、




「今日から俺の彼女だから。…よろしくね、ドジおとめ」




 絶対に離さない、という力を込めながら
 指と指をそっと絡めた。