彼はまた、驚いた表情を見せた。


「…………恥ずかしい?…俺が?」


 …二人きりの、家庭科室。

 …彼とすごく距離が近い。


「だって、あんな…」


 みんなの前で、公開告白なんて。


「君は今朝のあの告白を、取り消してしまいたいとでも言うの?…もしかしてあれは、冗談だったとか?」


 彼は、私の肩にその手を触れた。



 私を見つめる彼の瞳が、一瞬
 青白い炎の様に、揺らめいた。



 今、その炎に焼かれた様な、
 痛いくらいの熱さを感じた。



「…ち、違うよ!!あの告白は私の、本当の気持ち!!」


 …焼き焦がされてしまいそう。


「…そうじゃ無くて、…みんなの前であんな風に大々的に、公開告白されるのは嫌だったかな、って」


 彼はまた、その目を大きく見開いた。


 何を考えているか全く分からなかった氷の貌が、鮮やかに色づき始めた。


「…なんだ。そういう事?…別に全然、恥ずかしく無かったけど」


 至近距離で見るとますます、
 ぞくっとするくらい美しくて


「…………!」


 吸い込まれる様に、
 その瞳に魅入られてしまう。


「…だったらそういう言い方を最初からしなよ。謝るなら何で、あんな風に告白しようと思ったの?」


 私の耳に、彼の息がかかる。

 …ぞくっとする。




「……それは…勢い余って、というか…」




「…もしかしてあの二人の友達にああしろって、けしかけられたとか?」


「……!!」


 …その通りだ。


「…図星、って顔してるね?自分の本当の意思ではない計画をそのまま実行しちゃって、後悔して謝るなんて、君って……本っ当に、馬っ鹿じゃないの?」



 …………!!




 思いっきり、…怒られてしまった。




 彼はこういう口調で、怒る人だったんだ。




「聞かないの?…今朝の返事」




 心臓が撥ねた。




 少しだけブルーの炎で輝く瞳。

 青白いその炎は揺らめきながら、

 至近距離で私だけを、見つめている。



「…………聞きたい」



 その瞳の中にはまるで、
 生き物が宿っているみたい。


 
 時計を見ると、5時間目が始まるチャイムまであと10分くらいだ。








「これ、ありがとう。…今開けていい?」



 彼は私から貰ったチョコレートを、手にしていた紙袋の中から取り出した。


「う、うん。どうぞ!」


 持って来てくれてたんだ!


 経験した事の無い緊張感と、
 フリーズした脳内。

 

 爆発しそう、心臓。