俺と恵は行くあてもなく、フラフラとさまよった。

恵はさっきのことがあってか、まだ少し震えている。

無理もない。知らないおばさんにいきなり掴まれたんだからな。

さて、ここからどうするか。

祖父母の家に引き取って貰おうにも遠いしなぁ...

俺はズボンのポケットに両手を突っ込む。

ポケットの中がチャリンと鳴る。

金が雀の涙ほどではあるが入っていた。

二人なら一食くらいで尽きてしまうだろう。

だが幸いなことに、ついさっき朝飯を食べたばかりなのでこの金を使うのはまだまだ先でいい。

俺と恵は一言も話さず、ただひたすらに下を向いて歩いていた。

そんな中俺は、少しだが金があることを伝えるため、口を開く。

「なぁ恵。朗報だぜ?」

ずっと下を向いていた恵が、おもむろに俺の方へ顔を上げる。

「どうしたんですか...?」

「少しだけだが、ポケットに金が入ってた。これで一食分くらいはしのげるぜ。」

「....はは、蓮太さん、家を追い出された割には結構余裕っぽいですね。」

「そうか?でもまあ、バイトの給料は手渡しだからカードいらねぇし、住むとこさえ見つければ割と余裕かもな?(笑)」

「住むとこか....そういえば学校はいいんですか?私と居るようになってから行ってないんじゃ...」

「あ~、まあ今は気にしなくてもいいよ(笑)制服もカバンも家に置きっぱだし、しばらくは行けないなぁ。」

とは言うものの、俺は内心学校に行かなくていい口実ができて少し嬉しかった。いやかなり嬉しい。

「なんか....すみません。私のせいで蓮太さんの生活滅茶苦茶にしてしまって....」

恵はとても申し訳なさそうに頭を下げた。

「えっ、あっいや、ととととんでもない!俺が引き取るって決めたんだし俺の責任だよ!俺こそごめん。俺の注意不足であんなあっさりバレちまって...」

恵は頭を上げて

「蓮太さんは本当に優しい人ですね。」

と言って微笑んだ。

目には少し涙が浮かんでいるようにも見えた。