俺を....殺す....!?

俺は状況を飲み込めずにいた。いや、飲み込めるわけがない。

なぜ俺が殺されなければいけない?

俺は基本人と関わらない、だから殺意を抱かれるほどに恨まれるきっかけもないはずだ。

「まっ、待てよ!なんか誤解してるぞ!とにかくナイフを捨てろ!」

「.....命乞いね....問答無用!!!」

少女は逆手で持ったナイフを俺の首目掛けて振り下ろす。

俺は思わず目をつぶった。

カタンッ...

左耳の側で何かが落ちた音がした。

横目で見てみるとナイフが落ちている。

「えっ...?」

その瞬間、俺の胸にドサッと少女の体が倒れ込んできた。

どうやら力がもう限界だったらしい。

ふぅ...。

俺は少女の体を退けて起き上がった。

「うっ...うぐぅぅぅ...」

少女は苦しそうに起き上がろうとするが、また地面へ倒れ込んでしまった。

この少女は何者なのか、こんなボロボロな格好で傷だらけで一体何があったのだろうか。

そして何より、なぜいきなり喜山 蓮太という名前に殺意を覚えたのか。

「謎だらけだな...この子...。」

聞きたいことも色々あるし、本来ならば少女をおぶって山を降りて病院へ連れていくべきなのだろうが、この子が謎に俺に殺意を持っている以上、下手に手出しは出来ないよなぁ....

それに面倒事には巻き込まれたくない。

だからといってここに置き去りにするのも人の道を外れている気もするが...いや、殺されかけたんだからそれぐらいは許されるべきか....

う~ん、わからん!!!

誰かに助けを求めようとスマホを取り出すが、連絡先は家族と京香しかいない。

いきなりほったらかしにしてしまった京香に今から山に来いというのはさすがに気が引ける。

あーもう!どうにでもなれ!

俺はスマホをポケットにしまい、カバンを拾い上げ、少女を抱き上げておぶった。

ナイフは....一応俺が持っとくか。

そして俺は山を降りた。