20分くらい待つと、きょろきょろしながら歩いてくる彼女を見つけた。

「ほのか! こっち」

声を掛けると、気づいた彼女は駆け寄ってきた。


「宗ちゃん、家全然違うじゃん。私の家の近くだと思ってたらどんどん離れていくから、住所間違ってるのかと思っちゃった」

「ごめん……その、ほのかと一緒に帰りたくて、家同じ方向だって嘘ついてた、ごめん…!」

頭を下げると、上から笑い声が降ってきた。


「何だそうだったの? 宗ちゃん可愛いね」

顔を上げると、そこにはきゅっと口角を上げた彼女。

「え? かわ…」

「宗ちゃんちどれ?」

可愛いってどういうこと? って訊こうと思ったのに、彼女は既に僕の横をすり抜けて、アパートの方へ向かって行った。



「おじゃましまーす」

「どうぞ」

自分の部屋に家族以外の女の人を入れるのは正真正銘初めてで、この部屋は自分のなのに、何となく緊張してしまう。


「やっぱり男の人ってたくさんモノ置かない主義なの?」

「え? …いや、人によると思うけど…僕は必要最低限のものしか置いてないかな、部屋もそんなに広くないし」

キッチンで、飲み物を入れるためのコップを出していたら、彼女は部屋をきょろきょろと見回していた。……何だろう、何となく恥ずかしい…。