「…何で早瀬のことそう呼んでるの? てかそもそも、ほのかが早瀬を呼んでるところ1回も見たことなかったけど」

「から揚げさんを略して“あげさん”」

「何でから揚げ……?」


早瀬=から揚げになる理由が全く見えてこない……。


「初めて4人で学食行った時、私が食べてたから揚げをすごく食べたそうに見てきたから」

「え、それでそう呼んでるの?」

「うん」

えええええ………


「…私あんまり人の名前覚えるの得意じゃなくて、その人の第一印象とかで呼び方決めることがほとんどで」

「…え、じゃあ、私の“ガッキー”は何で?」

「古垣結衣さんに似てるから」

「え、あの女優の?」

「うん」


うっそ、と天音さんはスマホケースについている鏡で、自分の顔をまじまじと見た。


「似てないよ、私とは比べものにならないほど古垣さんの方が美人だし可愛い」

「だって第一印象で似てると思ったんだもん」

「ありがとうほのか、大好き」

ほのかに抱きつく天音さん。ほのかはきょとんとしている。


「古垣さんの名前は覚えられるんだね」

「小さい頃から好きだったから。芸能人とかも名前覚えられないから、古垣さんくらいしか名前解んないけど」

「おっまったっせ〜〜!」


後ろから、課題の再提出を終えたらしい早瀬が走ってきた。


「あ、あげさん」

「え、あ、あげさん? え、何ナニ? 何の話?」


先ほど判明した呼び方を早速天音さんが使ったので、僕とほのかは揃って笑ってしまった。


「じゃあ行こう、早瀬の奢りで」

「ええっ、待ってよ奢りって何!? あと、あげさんって何!?」


知らん顔して歩いていく天音さんを追い掛ける早瀬が面白くて、僕とほのかは笑いながら2人の後を着いて行った。