「宗くん悪かったって! 怒らないでよ」

「別に怒ってはないよ」

「ならよかった〜」


横で伸びをしながら、「悪く思わないで欲しいんだけど」と口を開いた。

「宗とほのかちゃんて、よくも悪くも似てるだろ? 雰囲気とか、あんまりガツガツしてないところとか」

「…はあ、」

「お互い控えめだったら、なかなか進展しないんじゃないかと思って」


言ってから、早瀬は僕の肩をガッチリ掴んだ。


「女子は男子からのアクションを待ってるんだよ、男を見せろ滝本宗一郎!」

「え……」

「いいか、次チャンスが来たら絶対に家行けよ、何なら宗が家に誘ったっていい。そこでいい感じの雰囲気になったらまずは手でも握って…」

「あああああ解った、解った!」


恥ずかしすぎて、僕は思わず話を遮った。

肩を掴まれた手をさりげなく解いて、一度深く呼吸をした。


「……早瀬、気持ちはありがたいんだけど、僕達は僕達のペースでゆっくりって感じだから、まだその…そういうのは…」

言いながらだんだん恥ずかしくなってきて、どんどん声が小さくなる。



「……っあ〜〜くっそ〜初々しいなあっ、天音にも見せてやりたい!」

そう言うと、彼は僕の背中をバシンと叩いた。


「いった、」

「まあ頑張れよ! 何かあったらいつでも話聞いてやるから! じゃあまた明日!」

「え…」

すると早瀬はさっさと駅の中に消えていった。


……な、何だったんだ……………