「で? で? そっからは!?」

僕の訂正なんて聞いちゃいない、再び身を乗り出す早瀬。


「え、帰ったけど……そもそも家には入ってないし、付き合って早々家に入るのは何かちが」
「あまーーーーい!!」

「っ!」


急に声を出して僕を指差してきた。

「は、早瀬……声でかいよ」

「あ、ごめんつい…」


一度水を飲み、コホン、と咳払いをひとつした早瀬は、三度身を乗り出して言った。


「お前、男子大学生だろ?」

「え…」

「健全な男子大学生だろ? だったら彼女の家行ったらぎゅーでもちゅーでもし放題だろうが何でそんな絶好のチャンスを……」

「早瀬ちょっと…っ」


周りはいい感じに賑やかだから話の内容が大勢に聞かれることはないにしろ、この手の話を外でするなんて、ましてや今まで誰かとこんな話をしたことがない僕にとっては、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。

僕は残っていたアイスコーヒーを一気に飲み干すと、伝票を手に取り立ち上がった。


「帰るよ」

「えっ、待ってよ俺まだ後3口分残ってる」


このままここでこの話を続けられたら、僕はきっと恥ずかしさで死ぬ。

早く店を出たくて早瀬を催促したら、彼は喉に詰まらせながら食べ終え、一緒に会計を済ませて外に出た。