「LINEしてきた。宗ちゃん、1つ、訊いていい…?」

「…ん? 何…?」

キッチンに戻ってきた彼女は、申しわけなさそうな顔でしゃがんで、僕に視線を合わせた。

「私昨日…変なこととか、言ってなかった……? 私何も、してないよね………? 大丈夫だよね……!?」

本当に何も覚えていないらしい彼女は、また記憶を辿っているのか、視線を上に、ぶつぶつとひとりごとを言い始めた。


「……罰ゲーム」

「………へ?」

「ほのかから僕にキスしたら、昨日のこと教えてあげる」

「ええ…っ、ば、罰ゲームって……!? ていうか、私何かやらかしちゃってたの……!?」

ほのかは急に頬を赤らめて、口に手を当てた。

「前に初めてデートした時、罰ゲーム確定してたでしょ、あれだよ」

「え……それ、覚えてたの……!? 私もうてっきり、宗ちゃん忘れたんだと思ってラッキーって思ってたのに……!」

「もちろん覚えてたよ」

嘘……! と彼女は目を丸くする。


「…ほら早く。教えてあげないよ」

「えっ…」

彼女の手を引き、体を近づける。


……昨日僕の心の中あんなに大変なことにさせたんだから………少しくらい、いじわるしてもいいよね…?



「……わ、解った………けど、目瞑って……恥ずかしいから……」

彼女は耳まで真っ赤になって、僕にそう言った。

………昨日は全然、恥ずかしがってなかったのに。……まあ当たり前か、覚えてないんだから…。