彼女の手を引いて、僕の胸に彼女を収める。両腕で力いっぱい抱き締めた。

「そっ、そ、宗ちゃん…!?」

「ほのか、大好き」

「っ、」

思ったことをそのまま伝えると、腕の中の彼女が息を呑むのが何となく解った。


「…うん、私も、宗ちゃんが大好き」


小さな声でそう言った彼女は、僕の背中に両手を回してきた。

それでもう胸がどうしようもなく締めつけられて、幸せだった。



「…ほのか」

「ん?」

体をわずかに離して、よく見えない彼女の顔を覗き込んだ。

「…キスしていい?」

「……え…?」

そう訊くと、彼女は驚いたように短く声をこぼした。



「……い、いいよ…」

わずかな沈黙の後、彼女の声がそう言った。


僕は彼女の顎を指で少し上げると、そのまま唇を重ねた。


たった数秒。

唇を離すと、彼女は僕を見上げていた。


「っ、」

その瞬間、何かがぷつりと切れたように、一気に羞恥心が僕を襲った。


「そっ、宗ちゃん…!?」

そのまま、ばたんと体を後ろに倒す。……痛い……今ので首おかしくした…………


「……宗ちゃん…?」

ほのかが、心配そうに僕の顔を覗き込んできた。


「…ごめん、何でもない、大丈夫……」


ああ………部屋が暗くてよかった………。

……僕の顔は、今は絶対に見せられない……………






( 体温計と玉子スープ )