「祥ちゃん、ちょっと来て!!」

大好きな紗香先生が

プール遊びしている僕を呼んだのは…………

お昼ご飯の少し前だった。

「紗香先生、なぁに?」

近づく俺をギュッと抱きしめ、涙を浮かべて…………

「お着替えして、帰ろうね。
おばさんがお迎えに来てくれるから。」って…………。

まだ幼稚園に来て数時間。

今日はみんなとお泊まりするから………

もっともっと一緒に居られるはずなのに。

『帰りなさい』っていう先生。

本当なら、駄々を捏ねたっておかしくないのに。

何かを感じ取ったのか、俺は素直に従った。

多分、本能で良くない事が起こったと感じたんだろう。

「…………分かったぁ!」

元気に答えて………

使うはずだったお布団とスプーンとコップを収めた。



「祥ちゃん。」

紗香先生と同じで。

涙を溜めた瞳で、抱きしめてくれたのは…………

一花お姉ちゃんだった。

「一美おばちゃんじゃないの?」

「母さんは、病院にいるの。
祥ちゃんも私と一緒に行こうね。」

一花お姉ちゃんは、そう言うとポロポロ涙を溢した。

「大丈夫?」

ポケットのハンカチで、拭いてあげればあげる程………

お姉ちゃんの目からは涙が溢れた。