「祥太先生。
おはようございます!」

ニッコリ笑顔の藤堂……………。

……………………怖い。

回れ右をして、渡り廊下に向かうが………

ズンズンと音を立てて追いかけて来る。

……………………はぁ~っ。

諦めて足を止めると

「やっと観念したみたいですね!」と

相変わらず不適な笑みを浮かべて、近づいて来た。

「………………あぁ~」

項垂れる俺の腕を掴むと、今来た道を戻り

三階の音楽室に向かう。

この階は、特別教室だけなので………

授業の始まりを知らせるチャイムが鳴っている今

ここに誰もいないということは………

これから一時間、この部屋に誰も来ない。

「藤堂………授業は?」

今さらな質問をする俺に

「澤先生には『今から一時間熱が出ます。』と言って来ました。
和花を心配している先生なので、問題ありません。」

そう言うと

「失礼します。」と拳を握った後

「構えて下さい!」

ボスッ。

今日も、腹にめり込んだ……………。

手加減してある。

前回も思ったが…………

かなり手加減してくれているのは分かる。

それでも………………痛い。

「和花の心は…………
こんなものではないので…………。」

前回は、和花の気持ちが分からず…………

藤堂の行動は、理不尽に感じていた。

けど…………。

今回は、これでは緩いと感じる。





ここ一週間、泣き腫らした目をしながら

毎朝笑顔で挨拶してくれる。

学校中の生徒が………

俺と和花の関係を知っている。

ただし………遠い親戚と…………。

何より………

クラスの生徒と…………付き合い始めた。