クマさんの脅しは杞憂で…………。

赤ん坊………和花(わか)は……………

『天使』だった。




産まれたと電話が入ったのは、母さんが想像した明け方だった。

今か今かと気になり…………

一睡も出来ない俺の横で

大イビキをかいているクマさんを叩き起こした。

「クマさん、行くよ!!」

まだ日も昇っていない朝

クマさんの車に乗り込み………少し緊張して病院までの景色を眺めた。

昨日クマさんが来た時は

過保護な母さんとクマさんに『一人で大丈夫なのに!』と呆れたが……

この為に泊まってもらったんだなぁ。

クマさんの車がないと………

朝っぱらから病院には行けないもんな。

「母さん。」

小声で声をかけると………廊下で待っていた母さんがニッコリ笑って

「祥太がお兄ちゃんだから………
これからお願いね。」と。

『お兄ちゃん』

うん、悪くない。

一花姉は、疲れて寝てるって聞いたから

病室には入らず………

赤ん坊を窓越しに見せてもらった。

「右から二つ目よ。
女の子だけど…………どの子も同じでしょう?」

母さんの説明に、目を向けると…………

そこには可愛い赤ちゃんがいた!

赤ん坊なんかじゃなく…………『赤ちゃん』だ。

「……………………可愛い……………。」

ほんの数時間前に産まれた…………一つの命。

神秘的で…………涙が溢れる。

クマさんと母さんが見ている事さえ気にならず

感動した。