「祥太一人だと不安だから
田辺さんに一緒に留守番してもらえるよう頼んだからね。
夕ごはんは、何か頼んで食べてね。
あっ、一花が…………
じゃあ、お願いね~」

姉貴が、どうしたんだよう~

相変わらずマイペースな母さんに翻弄され

電話する前より心配している。

田辺さん……………

クマさんが、泊まりに来てくれるんだぁ。

クマさんは、お袋が俺を捨てた時に出逢い。

その二年後の…………

父さんの事故死の時に再会した。

俺の最悪の時を共有しているからか

それからも、時々気にかけて顔を出してくれていた。

俺の所に顔を出す内

母さんと仲良くなって。

シングルファーザーの田辺さんの息子………心兄は。

クマさんが泊まりの時は、俺と一緒に母さんが面倒みていた。

そんな心兄も大学に進んで、一人暮らしを始めたから

一人淋しいクマさんは、時々俺の所に泊まりに来る。



「祥太~」

あぁ~

来たな…………。

クマさんは、何故か毎回ベルは鳴らさず

リビングの窓越しに声をかける。

「もぅ~
玄関から来なよぅ~」

ぶつぶつ言いながらサッシの鍵を開けると

「ヨシッ、エライエライ。
ちゃんと俺の顔を見て開けたな。
一人でお留守番するんだ、確認しないとダメだぞ。
怖いおじさんが来ると大変だからなぁ~」って…………

クマさんの声なんて、顔を見なくても十分分かるって~の。

あんなデカイ声、普通出さないよ~

それにお留守番って………

もう中3だぞ!

春には高校生の俺を子供扱いするなっ!!

……て…………言いたいけど………絶対言えない。

倍返しで返ってくるもんな。

俺の周りの大人達は………パワフルで心配性で…………

あったかい。