「祥太がヤキモキしても、仕方ないでしょう。
どうせまだまだ産まれないんだから。
一花、何分?」

母さんは、一花姉の痛みの間隔を聞いて

「まだね。
いいから、祥太は学校に行きなさい。
帰って来たら連絡してね。
今日は帰れないと思うから………
戸締まりしっかりしてよ。」と言って追い出された。

学校に居ても

朝の一花姉の顔が浮かび、ソワソワして授業に集中できない。

産まれたら学校に連絡してくれって、言っとけば良かった。

帰りのホームルームの時には

椅子からお尻が浮かび上がった状態で話を聞く程

頭は、産まれて来る赤ん坊と姉貴に飛んでいた。




急げ、急げ急げ……………。

自分の足に叱咤して

休むことなく家路を急いだ。

母さんが帰ってないから、自分で鍵を開ける。

まだ産まれてないのかなぁ?

そういえば…………

鍵を使う事も普段ない。

母さんか一花姉が必ず居るようにしてくれてたから………。

新鮮な気持ちで部屋に入り、リビングのスマホの電源を入れる。

「もしもし、帰った。
どう?
産まれた??」

産まれていたら、病院に行こうと思い

弾んだ声で質問するが。

返ってきた答えは………

「まだまだよう~
明日の朝までには産まれるんじゃない?」ってことだった…………。

まだまだ??

明日の朝?!

あの苦しみが、ずっと続くのか??

女の人の力強さを感じた。