「わか、おいで~。」

ファーストシューズが気に入らないらしく。

裸足だと歩けていたのに………

座り込んで動かない。

「仕方ないなぁ~
ほらっ、立っちして。
抱っこするよ。」

手を伸ばすと、笑顔を見せ立ち上がろうとする。

「祥ちゃ~ん、ダメだよ。
和花が甘えて、なんにも出来ない子になっちゃうんだから~
ほらほら、わか。
立っちしてここまでおいで。
お散歩出来ないよ。」



一花姉は、10月に赤ん坊を産んだ。

その日は、朝からバタバタ。

「………………祥………ちゃ……ん……………。
ごめん…………。
朝ごはん……………出来て………な………ウッ………………。
スゥ~スゥ~…………………ハァッ。
産まれる……………みた………………い。」

苦しいはずなのに

相変わらず、俺の心配をする姉貴に怒りたいが。

脂汗を浮かべて耐えてる姿を見ると

「……………頑張れよ。」としか言えない。

「タクシーを呼べばいいか?」

「荷物はここに置くから。
母さん、電話は~??
病院に行こう。」

段々痛みの間隔が狭まっていく姉貴に声をかけていると。

「祥太、まだ居たの?
早く学校に行かないと、遅刻するわよ。」とコーヒーを片手に

呑気に顔を出す。

「母さん、何やってるんだよ!!
電話は??
タクシー呼ばないと!!」

目の前で唸る娘を見ても

平気な顔でコーヒーを飲む母親が信じられなかった。