「…………おかえり。」

思春期真っ只中の俺は、照れくさく不機嫌な声が出る。

「あっ、祥ちゃん。
五月蝿くしてごめんね~
さぁ、ケーキ食べよう。」

そう言うと、10年前と変わらぬ笑顔で

俺の前にチョコレートケーキと牛乳を出してくれた。

「プッ。
一花、祥太を幾つだと思ってるの~
もぅ牛乳なんて飲まないわよ。」

母さんの指摘に

「えっ、そうなの?!
ごめん、直ぐ新しいの持って来る。
何がいい??」って焦ってる。

「これでいい。
それより、一花姉は何飲むの?
腹が大きいんだから、母さんが動いてやれよ。」




一美おばちゃんは、俺を引き取った時から『母さん』になってくれた。

呼び方も俺の好きにさせてくれ

決して押しつける愛情を示すことはなかったのに………。

父さんと同じ愛情で包み込み

…………自然に家族になった。

「良いのよ。
妊婦は、動いた方がお産が楽になるの。
それより、勉強は進んでるの?
暑かったらここでやりなさいよ。」

小学生じゃあるまいし

母さん達の監視の元で勉強なんて出来る訳がない。

「別に、暑くない。
扇風機で十分。」

さっきまで『暑い』と、うだっていた事はナイショだ。