それから葵は私の家に泊まりにくるようになった。
葵の実家から私の家までは車で一時間かかる
仕事終わりでも
次の日が仕事でも
会いに来てくれた。
葵が実家暮らしをしている理由は
独立をするため
全ては夢のため。
「27にもなって実家暮らしとか格好悪いでしょ」
「一人暮らしして格好つけてたらいつまで経っても独立なんてできないからね」
「美容師なんて泥水吸ってるくらいじゃないとやっていけないからね」
私は葵が仕事の話をしているときが好きだ
葵はこんなつまんない話聞いてくれてありがとって言うけれど
全然つまらなくない
好きなものをとことん好きでいる葵が格好いいよ
私にはこんなに熱量もないし、
こんなに夢中になれるものもないから


