誰にもあげない




切ってもらった髪は


指通りが良くなって
軽くて
前髪は私の顔に合わせて切ってくれていた

エラが張っていて頬が大きい私の顔に合わせた
目の間隔が狭くて面長な私。

それをうまくカバーしているカット。

「垢抜けて可愛くなった」


「ありがと」


「俺、家族の髪も切らないからな」



「なんか、ごめん」



「俺が切りたくて切ったからいいの」


「ありがと」


「髪切ってるときさ菜月めっちゃ嬉しそうな顔しててさ、また切りたいなって思った」



「嬉しいよ。嬉しいに決まってるじゃん」


「私、夢だったんだよね
葵にずっと髪切ってほしかった」



「いつでも切ってやるよ」