窓縁と悪魔




「僕はとーっても長生きな種族でね 何百年も前からここに住んでる


ここには本当に誰も来ないんだ きっとカンナから聞いたように 孤独の塔と噂されているから寄りつく者が誰もいないんだね


最後に誰かが来たのは100年くらい前だったよ


……その子も君と同じだった」


「同じ?」


「そうさ 君と同じで孤児院からの“罰”でここまで連れられてきたようだった


ただ君と彼の違いは 彼が盗みを働いたこと」


「なにか盗まれたの?」


「いいや 盗まれる前に僕が気づいて取り返したんだけど どうして盗んだの?って聞いたら


…どうやら彼はこの国のスラム街に住んでいて 盗み癖がついてしまっていたらしいんだよ


その盗み癖のせいで“罰”を受けたんだと聞いたよ


“罰”の期間が過ぎたあとは彼は孤児院に戻っていってしまったから もう彼は今何をしているかは分からないけれどね」


「それからは…誰もこの塔に来なかったの?」


「誰一人として来なかったよ」


ラスは寂しそうな顔をしてうつむいた


「話し相手もない ともに草花の成長や日常の中で感じる小さな喜びを 分かち合うことのできる相手もいないのは… 寂しいものだよ」