「うっ…」

また意識を失ってしまっていた。今度はさっきの記憶がある。あんな事夢であって欲しいけど左手は何度いじろうが固いままだった。

「明内くん!良かった…また意識を失っていたんだよ…こんな事いきなり言われたら困るよな。」

心配そうな顔をした渡瀬さんが僕の顔を覗き込む。

「そうですね。本当に怖いです…」
思わず涙が溢れる。

「もう家族には会えないんですか…?」

「残念だが,世間的な目や諸事情により君は僕の病院からは出られないんだ。」

…知ってるよ。テレビで言ってたさ。石化病患者は専門病院に入れられてもう外には出られないと。

父は僕が子供の頃に蒸発,そこからは母が女手一つ僕を育ててくれた。責めて立派な社会人になって恩返ししたかったのだがその夢も今儚く散った。

「…そうですか。分かりました。」

僕はもう何もかもどうでも良くなっていた。
普通の人ならここで反抗したり大泣きしたりするだろう。
でももう僕にとってはどうでもいい。
あと一年で死ぬんだし。もうどこにも出かけれられないし。きっとこの狭い部屋で余生を過ごすんだ…今更足掻こうと思わない。

先程の態度と打って変わった僕の姿に渡瀬さんは少し驚いた顔をしていたが,話を続けてた。
「君はこれから石化病専門の病棟に移って貰う。
そこでは比較的自由に動けるから。安心しなさい。」

今更そんなことを言われてもどうでも良い。
もう僕の人生に”光”なんて見当たらなかった…