文化祭直前。
校内には居残りで作業を進める生徒たちで溢れていた。
私はというと実行委員の作業とクラスの出し物の作業でバタバタとしてる。
でもこの充実している感じ。悪くない。
「生成~!見てみて!」
ゆりぞーの声がして振り向くと
「ギャーーーーー!!!」
目が飛び出たゆりぞーが目の前から顔を出し思わず悲鳴をあげる
「びびるっしょ!クオリティ高くない!?」
「いやクオリティ高すぎて心臓に悪い…」
「まりりんオバケメイクの天才だわ~」
ゆりぞーの後ろからゾンビナースの格好をした美琴が現れた
「生成にもあとでしてあげるね♪」
まりりんはよほど楽しいのか目を輝かせ私にそう言った
「え!私にはどんなオバケメイクしてくれるのー!」
「んー生成はねぇ~ゾンビバニーガールとかどう?♪」
「それは…怖がってもらえるかな…?」
「うん!任せてって!」
若干の不安を覚えつつ私は作業を進める。
ふとスマホに目を向けると数分前に朝陽くんからメッセージが来ていた
やばっ全然気がつかなかった、!!
開いてみると
『メインステージの設営やるからこいって委員長が言ってる~』
「あ、やば!忘れてた!!!美琴ーー!」
「なになに~?」
「メインステージの設営今日だったの忘れてた!」
「え!そうじゃん!行かなきゃ!」
「え、ちょっと待って?そのままいくつもり?」
ゾンビナースの格好をしたままの美琴が教室を出ていこうとしていた。
「もち!今から宣伝しとかなきゃ♪」
「まぁ、あなたが恥ずかしくないならいいけど(笑)」
そんなこんなでゾンビナースと2人で校庭に行くともう既に設営は終わっておりステージの上では当日のリハーサルが行われていた。
そのなかには軽音部の朝陽くんたちの姿もあり私たちに気づいたイッチーが「きたきたー!」と手招きをしてくる。
そばに寄っていくと
「え!?美琴ちゃん!?なにその格好!」
「ゾンビナース!どう?怖い??」
「んー怖いっていうよりなんかえろーい!」
「え~なにそれ!褒め言葉として受け取っとく~♪」
すでに仲良くなっているイッチーと美琴は楽しそうにお喋りをしている。
なんか二人には通じるものがあるんだろうな~。キャラ似てるし。美琴に言ったら怒られそうだけど。
「あ、朝陽くんごめんね?LINE気づかなくて」
「全然!設営すぐ終わったし!」
「皆もこれからリハーサル?」
「そ!先輩が終わったらね~」
今日も眠そうな顔の織田くんがそう答えた
「へぇ~!じゃあちょっと聴いてっちゃおうかな!」
「それはダメー!」
そう言ったのは朝陽くんだった。
「えー!何で!」
「そうだよ朝陽~意地悪いうなって!」
響くんの言葉に続いて私もそーだそーだー!と反論する。
「意地悪とかじゃなくて!羽柴には当日までお楽しみにしときたいの!」
そう言って私を見下ろす朝陽くんの顔が夕日に照らされて何だか少し火照っているように見えた。
「そ、そーなの?そんなにいって自分でハードルあげてない?」
あ~我ながら可愛くない返答…
「大丈夫!自信あるから」
「おいおい~俺らのハードルも勝手にあげられちゃってるよ~」
響くんと織田くんはやれやれとした表情。
「次、One triggerの皆さん~」
3年生の実行委員がそう呼び掛けると「じゃあね」と朝陽くんたちが行ってしまった。
「なんかいい感じじゃーん?」
その姿を見送る私の背後から美琴がニヤニヤ顔を出す
「もー冷やかさないで!普通だよ普通!」
「え~普通じゃないでしょ!何の気にもとめてない女子にあんなこと言う??」
「それは……知らない!もう行くよー!」
私も期待してないと言えば嘘になる。
朝陽くんの中で他の女子よりちょっと特別な存在だったらいいなって。
