仕切り直して朝食の続きだ。

「柴原さん、ご飯は?」

リビングに来たのに一向に朝食をとる気配のない柴原さんに声を掛けると、小さく首を横に振った。

「俺は朝はいつも食べてないから。すずのこと、何かやろうか?」

「え?えーっと。」

突然言われるとどうしていいか困る。
聞かずとも自分で考えて行動してほしいなんて思ってしまうのは、今はまだ求めすぎだろうか。

「じゃあ保育園の準備をお願いします。えーっと、エプロンと手拭きタオルと、おむつと予備の服と…。」

ひととおり早口でばーっと説明すると、柴原さんはわかったと言って私たちの目の前を行ったり来たりバタバタと動き出した。

横目で見ているとおむつの枚数が足りない気がするし、予備の服もトレーナーしか入れてない。あまりのぎこちなさに、段々とイライラしてきてしまう。

「あーもう、柴原さん、すずにご飯食べさせてて。準備は私がやるから。」

「う、うん。」

柴原さんと役割を交代すると、私は超特急で準備を開始した。だけどあっという間に終わってしまう。すずを見ててもらえるだけでこんなにも軽やかに動けるものなんだと、感心にも似た気持ちになった。

すずは初めお利口に食べていたけど、途中からイヤーと騒ぎだした。それに対しておろおろする柴原さん。イライラを通り越して何だかもう笑えてくる。

社長だなんて立派な肩書きを持っておきながら、役立たずすぎるでしょう。