「…………で?
いくら欲しいんだぁ~?
まさか、響とデートするお金って……事はないよな?」

先生とも違う

お兄ちゃんとしての質問に

「違うよ。
それに、お小遣いが本当に欲しかった訳じゃないの。
………………ごめんね。
ずっと、謝りたかったんだけど…………
意地を張っちゃって……………。
お兄ちゃんとゆっくり話すきっかけが欲しかったんだ…………。」って。




あのキスの日以来。

ゆっくり目を見て………

初めて話をした。




「俺こそごめん………………。」

そう言うと、以前と変わらない笑顔で

頭を撫でてくれた。

ダイニングから続く廊下の扉には

お義父さんとお母さんの笑顔が映ってる。

コッソリ親指を立てて…………。

「お兄ちゃん……………。
おねだりして良い?」って

高校生になるまで当たり前だったお姫様に戻って甘えてみた。

……………これでいい。

ずっとそうだったように。

お兄ちゃんの小さいお姫様で……………。



彼女になりたい!

もっと近くで……自分だけのお兄ちゃんにしたい………なんて

ワガママな感情を優先したから…………

お兄ちゃんとのお姫様の関係すら壊してしまったんだもん。

夏生がしたかったこと…………。

お兄ちゃんに

『懐かしい感情と今を意識して考えて欲しいよ~』って言ってたけど。

本当は、私のことだったんだよね?

先の事は分からないけど………

今までの思い出を全て捨てて

今の感情だけを押しつけたらダメだって…………。

今までの思い出の延長に…………先があるって…………。