「それで、和花はどうするの?」

帰りに寄ったケーキ屋さんのザッハトルテを食べながら

夏生の言葉を聞く。

こんな時にも思うのは………

祥兄ちゃんとの時間。

チョコレートが好きなお兄ちゃんの影響で

いつの間にか好きになったザッハトルテ。

今でこそ自然だけど。

小学生の頃は、飾りのないケーキを注文する子供に

驚かれてた。

買って帰ってあげたら………

喜んだだろうなぁ~

一回り以上離れた大人の男の人を捕まえて

『可愛い』なんて、怒られそうだけど。

ケーキを前にした祥兄ちゃんは…………

子供みたいに可愛い笑顔だから。

そっと、お兄ちゃんの笑顔を思い浮かべてたら……。

「もぅ、和花~
聞いてる?」と、夏生にデコピンされる。

「痛い~!」

オデコを押さえて、夏生を睨むと。

「どうせ、祥太先生の事を考えてたんでしょ?
『恋する乙女』の顔になってた!」って………。

うっ………。

しっかりバレてる…………。

でも『恋する乙女の顔』って………

どんな顔????

わかんないけど………恥ずかしい~

もしかして、お兄ちゃんにもその顔でバレてるのかな??

冷や汗をかいていたら、再び……

「だから~」って。

結局、私の頭の中はいつだってお兄ちゃんの事でいっぱいなの。