それは、霧のかかった不思議な月の夜でした。
轟音が、私の耳を突き刺しました。
音が聞こえたの。不思議な音が。
飛び立つ鳥
泣き喚く虫
うるさいなぁと耳を塞いだのでした。
森に入り進むと小さな小屋があったのです。
少し覗くとそこはカフェのようでした。
しかしドアを開けるとそこは廃墟のようです。
すると向こうから人影が見えてきました。
しかし人では無いのです。
頭は窓、ロングスカートパーカーのフードを深く、深くかぶる人だったの。
その人は真ん中にある机に腰を下ろすと、
不思議な呪文を唱え出した。
『𓀇𓀼𓃟𓃘𓃘⚨☤♗♗𓆣𓆣☿⚮☊☥』
まったく聞き取れなかったが最後だけ聞き取れた。
「…人よ」

と、ここで一旦本を閉じる。
蒼い表紙に桜が舞い落ちた。
窓を見ると開けていた隙間から光が差し込んでいる。夜どうし本を読んでいたみたいだ。
もう1度本に目をおとそうとするとスマホの通知音が部屋に鳴り響いて体がビクッとする。
見ると親友からのメッセージだった。
『おはー!あんたまた夜どうし本読んでたでしょ?そんで又本読もうと思ったっしょ?私は行けないんだから初授業遅れんなよ!』
こいつは何故私の考えが分かるのか。いや勘がいいのか?まぁ何でもいい。
『わーったよ。てめぇもくたばんじゃねぇぞ』
そう返し、掛かっている制服に着替える。
そしてスクバにスマホと授業に必要なものを詰めて階段を駆け下りた。
鏡の前に立ち薄い碧の髪を梳く。生まれつきの色で苦労もあったがこの髪は好きだ。
「…よし。綺麗」
スクバを引っ掴んで家を出ようとしたとき本を忘れたのを思い出して本棚から1冊取り家を出た。

そして放課後、部活勧誘で賑わっていた。
皆が色んな部活に声を掛けられる中私は誰にも声を掛けて貰えない。まぁ当たり前だろう。
碧髪で目付きが悪いから声なんて掛けたく…
「なぁ、お前うちの部活に来ないか?」
いきなり声を掛けられる中またビクッとした。
見ると金髪ショートの少女が立っていた。
「…あぁ。自己紹介が遅れた。部長の怜花だ」
「あ、いやそうじゃない、です」
睨み付けていた様に見えたのかもしれない。
謝ろうとすると手を取られた。
「私の部活に来てくれないか?」
真っ直ぐに目を見られ思わず頷くと手を引かれ今は使われてないはずの部室につれていかれた。
「改めて、ようこそ魔術部へ」
怜花センパイはロングパーカーを羽織り。
カーテンを開け。
少しニヤリとしながらそう言った。
「君をここに引き込んだのは君から魔術の残り香がしたからだ。白魔術かな?」
私は小六の時白魔術を使った。
「図星かな。何故かは聞かないでおくが…きっと君の力になれるよ」
ズケズケといろいろ言ってくるこの人に若干イラついてきた。だいたいこんなインチキ臭い魔術部とか…大体自分のことほぼ言わないし。
「自分のこと話さないのはきみもじゃないかな?まぁそうだね。インチキだと思うんなら私の黒魔術観てくれないか?」
そういうと蝋燭に火をつけ、ガラスボールに入れた水を部屋の真ん中に描いた魔法陣の中においた。
すると、彼女はカッターで腕を切りガラスボールに垂らした。
「ちょ、なにやってんだよ?!」
落ち着けという顔をむけると彼女は本を広げた。
『𓀇𓀼𓃟𓃘𓃘⚨☤♗♗𓆣𓆣☿⚮☊☥』
なにか呪文のようなものを唱えると魔方陣から
小さな花が生える。その花は妖しく光っていて
彼女が茎を折ると血が滴り落ちた。
「これは魔草だ。本当はここからが本番なのだが…まぁ今はこのくらいにしよう」
ボールの中に魔草を入れると、こちらを振り向く。この時点で私は恐怖で足が竦んでいた。
「怖がんなくても…これで信じて貰えた?」
私はゆっくり頷くしかなかった。